「まいった、今日も自分の仕事に全く集中できなかった……」
「まずい、自分が現場にいないと、あらゆる判断が止まってしまう……」
もしあなたが今、そんな焦りや閉塞感を感じているなら、それは決してあなたの能力不足ではありません。むしろ、組織の「構造」に致命的な急所があることを知らせる、重要な警告サインです。
リーダー・マネージャーが現場の最前線で走り続けなければ回らない状態は、一見すると活気があるように見えます。しかし、その実態は組織の成長を止める大きなリスクを孕んでいます。本来のリーダー・マネージャーとしての役割を取り戻すために、今こそ「マネジメントの定義」を正しく再確認し、自身の立ち位置を再構築しましょう。
マネジメントとは「勝てる環境」を整えること
マネジメントとは、単なる「管理(見張り)」ではありません。本来の役割は、役割や戦略を仕組み化し、部下が最短距離でゴールへ進めるための環境を整えることにあります。
マネジメントが注力すべき「5つの本来業務」を定義すると、以下のようになります。
❶組織のビジョンや理念を浸透させる
チームが進むべき「北極星」を示し、個々のルーチンワークがどのような価値に繋がっているのか、その意味を定義します。これによって、部下は迷った時の判断軸を持つことができます。
❷組織目標とチームの目標に落とし込む
組織のビジョンを達成するために、チームが「何を達成すべきか(成果目標)」、そして「何を実行すべきか(行動目標)」を緻密に検討し、示します。
❸戦略を具体的な「役割分担」と「手順」に落とし込む
抽象的な方針を実行レベルまで分解します。進捗を管理する「中間目標」を設定し、遅れへのサポートや、順調な場合の計画見直しなど、計画全体を常に最適化し続けます。
❹成果の標準化:全員を「勝ちパターン」の実行者に変える
一部の天才的なハイパフォーマーに依存せず、新人も含めた全員が一定以上の成果を出せる構造を設計します。再現性のある仕組みとして、手順や手法を標準化(マニュアル化)します。
❺集合知の資産化:個人の「勘」をチームの「共通言語」に変える
属人的なテクニックや「勘」を言語化し、誰もが再現可能な共有財産へ変えます。手法が可視化されることで、チーム内の知識・経験は個人の中に消えず、「組織の資産」として積み上がっていきます。
マネジメントの真の仕事は、この「仕組み」を整えることであり、自らが実務を回し続けることではないのです。
リーダー・マネージャーが動くほど、チームの戦力は低下する
現場でトラブルが起きるたび、リーダー・マネージャーが「自分がやったほうが早い」と自ら動いて解決する。これは短期的には効率的に見えます。しかし、長期的には組織に致命的な欠陥をもたらします。
最大の罠は、リーダー・マネージャーが動けば動くほど、自分ばかりが忙しくなり、本来の職務である「環境整備」や「仕組みづくり」がおろそかになることです。
リーダー・マネージャーが「現場のプレイヤー」として時間を使い切ってしまうと、前述した「5つの本来業務」がすべてストップします。その結果、仕組みが更新されないため、部下はいつまでも「どうすればいいですか?」と指示を待ち続け、個々の判断能力は育ちません。 つまり、リーダー・マネージャーが良かれと思って走り回るほど、皮肉にもチームの戦力は低下の一途をたどるのです。
育成をルールの更新と捉える
この状況を打開する唯一の道は、「個人の努力」ではなく「構造の強さ」で成果を出す方向にシフトすることです。
マネジメントにおける育成とは、部下の性格を教育することではありません。むしろ、「誰もがリーダー・マネージャーと同じ判断ができるように、仕組み(ルール)を更新し続けること」です。
リーダー・マネージャーしか持っていない「コツ」を見える化し、全員を勝ちパターンの実行者に変える。目指すべきは、リーダー・マネージャー不在でも最高速で動くチームです。
現場から一歩引く「勇気」が未来を作る
最大の壁は、リーダー・マネージャー自身の「抱え込み」です。「自分がやったほうが早い」という誘惑を断ち切り、一歩引く決断ができるかどうかが、チームが勝ち続けるための鍵となります。
現場でミスが起きたとき、それを個人の能力不足として片付けず、「仕組みの不備」と捉えてください。自分の判断基準を言葉にし、全員の武器として手渡す。そうして現場を仕組みに任せることで初めて、あなたは「将来の計画づくり」という本来の業務に集中できるようになります。
明日から「自分の時間」を1時間作る具体アクション
今日から、自分を現場から引き剥がすためのトレーニングを具体的に始めましょう。
❶判断・基準のピックアップ
日常業務で、部下から質問される「これ、どう判断すればいいですか?」「これ、どうすればよいですか?」という内容の中から、頻度の高いもの・拘束時間が長いものを一つを選んでください。
❷ルールの提示
それを「〇〇の場合は、こう判断する」「〇〇の場合は、このように行動する」という明確なルールにして示し、その権限を部下に任せましょう。
❸報告体制の構築
細かいやり方(プロセス)には一切口を出さず、結果の「報告」を受ける体制に変更します。
❹時間の計測
このアクションによって、自身の業務時間(本来すべき戦略的業務の時間)が実際に増えたか否かを計測してください。時間を可視化することで、仕組み化の効果を実感でき、さらなる改善へのモチベーションに繋がります。
あなたが現場の実務を手放し、空いた時間を「仕組み作り」に投資する。その一歩が、チーム全体の生産性を劇的に向上させます。
リーダー・マネージャーが「一歩引く」ことで、チームは強くなる
マネジメントの成果とは、あなたがどれだけ現場で汗をかいたかではなく、「あなたがいなくても、どれだけ成果が出続ける構造を作れたか」で測られます。
「自分が動かないとダメだ」という思い込みを捨て、「自分がいなくても回る環境を整える」という使命に注力してください。この「一歩引く決断」こそが、チームを常勝集団へと変え、あなた自身を本来のリーダーの役割へと解放するのです。 今日、部下からの質問を「答えを教える場」ではなく「ルールを作る場」に変えることから始めてみませんか。
参考情報
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